札所数 | 59(番号付き札所:48 客番・番外札所:11) |
別称 | 日本西方四十八願所、弥陀霊像西方四十八願所 |
関連霊場 | |
公式情報・事務局 | |
御開帳情報 | |
開創年・開創者 | 天保2(1831)年2月・専阿 |
縁起・由緒・開創経緯 |
◎弥陀霊像西方四十八願所縁起より◎ 専阿の札所選定の基準は、「霊山霊地を問はず、寺の大小堂㮌を云ず、石木絵像と法号をも論ぜず、ただ感応白(いちじるし)き霊仏のミを撰んだ」とのこと。 |
備考 |
・各地の阿弥陀如来巡拝霊場。 ・札所選定者の専阿とは、浄土宗西山派の僧で裔空寛苗といい、専阿と自称して乗誓と号した人物。 ・遠国11ヶ所を加えて、全59ヶ所から成っている。 ・西方導詠歌と翼添の歌各144首の内37首は古歌で、他はすべて専阿が詠んだ歌。 ・縁起の中で専阿は、本霊場を巡った人に「洛陽48願所」の巡礼も合わせて勧めている(と言うより、必ず参り給うべしと義務付けている)。 ・元の札所配置だと、徒歩でおおよそ60~70日といった行程になる。 ・西方四十八願所霊場会による書籍が、平成19(2007)年に出版されている。 |
情報掲載日・更新日 | 公開:2024年02月27日 更新:2024年03月09日 |
札番 | 山・院・寺号 | 御本尊 | 宗派 | 住所 | 備考 |
1番 | 定額山 善光寺 | 阿弥陀如来 |
無宗派 ・大勧進:天台宗 ・大本願:浄土宗 |
長野県長野市長野元善町491 | 信州善光寺 |
2番 | 日輪山 遍照光院 曼陀羅寺 | 阿弥陀如来 | 西山浄土宗 | 愛知県江南市前飛保町寺町202 | |
3番 | 柳星山 護国院 常念寺 | 阿弥陀如来 | 西山浄土宗 | 愛知県一宮市大江1丁目11-26 | 尾張法然25霊場 |
4番 | 玉松山 般若院 祐福寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗西山禅林寺派 | 愛知県愛知郡東郷町春木屋敷3417 | 城東33観音 |
5番 | 亀井山 円福寺 | 阿弥陀如来 | 時宗 | 愛知県名古屋市熱田区神戸町301 | |
6番 | 龍松山 正住院 | 阿弥陀如来 | 西山浄土宗 | 愛知県常滑市保示町1丁目56 |
知多法然25霊場、知多坂東33観音 |
7番 | 恵日山 大宝院 観音寺 | 聖観世音菩薩 | 真言宗醍醐派 | 三重県津市大門32-19 | 津観音、三重88霊場 |
8番 | 厭離山 欣浄寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗鎮西派 | 三重県伊勢市一之木2丁目6-7 | 再建中、法然25霊場 |
9番 | 萱堂 | 真言宗 | (伊勢国内宮菩提山) | 廃寺 | |
10番 | 五劫院 | 浄土宗鎮西派 | (伊勢国内宮菩提山) | 廃寺 | |
11番 | 大宝山 仏眼寺 | 阿弥陀如来 | 時宗 | 滋賀県栗東市綣8丁目4-29 | |
12番 | 紫雲山 聖衆来迎寺 | 阿弥陀如来 | 天台宗 | 滋賀県大津市比叡辻2丁目4-17 | |
13番 | 聖真寺 | 天台宗 | (近江国比叡山日吉本地堂) | ||
14番 | 比叡山 浄土院 | 阿弥陀如来 | 天台宗 | 滋賀県大津市坂本本町4220 | 伝教大師の御廟所 |
15番 | 魚山 大原寺 勝林院 | 阿弥陀如来 | 天台宗 | 京都府京都市左京区大原勝林院町187 | 法然25霊場 |
16番 | 鞍馬山 鞍馬寺 |
千手観世音菩薩 毘沙門天王 護法魔王尊 |
鞍馬弘教 | 京都府京都市左京区鞍馬本町1074 | 新西国33霊場 |
17番 | 紫雲山 宝林院 西念寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗鎮西派 | 京都府京都市北区大宮中林町70 | 久保御堂 |
18番 | 鈴聲山 真正極楽寺 | 阿弥陀如来 | 天台宗 | 京都府京都市左京区浄土寺真如町82 | 真如堂、洛陽6阿弥陀 |
19番 | 聖衆来迎山 無量寿院 禅林寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗西山禅林寺派 | 京都府京都市左京区永観堂町48 | 永観堂、洛陽6阿弥陀 |
20番 | 華頂山 大谷寺 知恩院 | 阿弥陀如来 | 浄土宗鎮西派 | 京都府京都市東山区林下町400 | 法然25霊場 |
21番 | 仏性山 本覚寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗鎮西派 | 京都府京都市下京区本塩竈町558 | 洛陽48地蔵 |
22番 | 八葉山 安養寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗西山禅林寺派 | 京都府京都市中京区新京極蛸薬師下ル東側511 | 洛陽6阿弥陀 |
23番 | 家隆山 光明遍照院 石像寺 | 地蔵菩薩 | 浄土宗鎮西派 | 京都府京都市上京区千本通上立売上ル花車町503 | |
24番 | 五台山 清凉寺 | 釈迦如来 | 浄土宗鎮西派 | 京都府京都市右京区嵯峨釈迦堂藤ノ木町46 | 嵯峨釈迦堂 |
25番 | 西山 三鈷寺 | 仏眼曼荼羅 | 西山宗(四宗兼学) | 京都府京都市西京区大原野石作町1323 | 華台廟、西山国師16遺跡 |
26番 | 報国山 念仏三昧院 光明寺 | 阿弥陀如来 | 西山浄土宗 | 京都府長岡京市粟生西条ノ内26-1 | 法然25霊場 |
27番 | 八幡本地堂 | 真言宗 | (山城国八幡宮御本地堂極楽寺) | 廃寺 | |
28番 | 阿弥陀寺 | 阿弥陀如来 | 西山浄土宗 | 京都府宇治市宇治下居42-9 | |
29番 | 光明山 即成院 | 阿弥陀如来 | 真言宗泉涌寺派 | 京都府京都市東山区泉涌寺山内町28 | |
30番 | 小田原山 法雲院 浄瑠璃寺 | 阿弥陀如来 | 真言律宗 | 京都府木津川市加茂町西小札場40 | 九躰寺、西国49薬師 |
遠国1 | 立山 芦峅寺 奥之院 | 天台宗 | (越中国立山) | ||
遠国2 | 白山 越南地 奥之院 | 天台宗 | (越中国白山) | ||
遠国3 | 富士山頂 | 天台宗 | |||
遠国4 | 定額山 浄智院 善光寺 | 善光寺如来 | 浄土宗 | 山梨県甲府市善光寺3丁目36-1 | 甲斐善光寺、甲斐108霊場 |
遠国5 | 手石阿弥陀仏(手石弥陀窟) | 禅宗 | 静岡県賀茂郡南伊豆町手石 | ||
遠国6 | 三縁山 広度院 増上寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗鎮西派 | 東京都港区芝公園4丁目7-35 | 関東18檀林、江戸33観音 |
遠国7 | 始覚山 還洞院 本覚寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗鎮西派 | 青森県東津軽郡今別町今別119 | |
遠国8 | 熊野妙法山 阿弥陀寺 | 阿弥陀如来 | 真言宗御室派 | 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町南平野2270 | |
遠国9 | 加祐山 来迎寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗西山禅林寺派 | 山口県宇部市船木茶屋1521 | |
遠国10 | 井上山 光明院 善導寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗鎮西派 | 福岡県久留米市善導寺町飯田550 | |
遠国11 | 阿蘇山 | (筑後・肥後国) | |||
31番 | 州見山 念仏院 安養寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗鎮西派 | 京都府木津川市市坂久保川56 | |
32番 | 超勝寺 | 真言宗 | (大和国二条超勝寺清海曼陀羅) | 廃寺 | |
33番 | 思惟山 五劫院 | 阿弥陀如来 | 華厳宗 | 奈良県奈良市北御門町24 | |
34番 | 東大寺 龍松院(龍青院) | 阿弥陀如来 | 華厳宗 | 奈良県奈良市雑司町406 | 下記へ |
東大寺 勧進所 阿弥陀堂 | 阿弥陀如来 | 華厳宗 | 奈良県奈良市雑司町406 | ||
35番 | 日輪山 称名寺 | 阿弥陀如来 | 西山浄土宗 | 奈良県奈良市菖蒲池町7 | |
36番 | 元興寺 極楽坊 | 阿弥陀如来 | 真言律宗 | 奈良県奈良市中院町11 | |
37番 | 二上山 當麻寺 | 當麻曼陀羅 | 真言宗・浄土宗 | 奈良県葛城市當麻1263 | 法然25霊場 |
38番 | 国軸山 金峯山寺 | 金剛蔵王大権現 | 金峯山修験本宗 | 奈良県吉野郡吉野町吉野山2498 | |
39番 | 蹴破山 西方院 浄土寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗鎮西派 | 和歌山県有田郡有田川町西ケ峯1466 | |
40番 | 雲雀山 得生寺 | 阿弥陀如来 | 西山浄土宗 | 和歌山県有田市糸我町中番229 | |
41番 | 梶取本山 総持寺 | 阿弥陀如来 | 西山浄土宗 | 和歌山県和歌山市梶取86 | |
42番 | 引接寺 | 時宗 | (和泉国堺) | 廃寺 | |
43番 | 磯長山 叡福寺 | 聖如意輪観世音菩薩 | 真言宗系単立 | 大阪府南河内郡太子町太子2146 | 上之太子、聖徳太子28霊場 |
44番 | 荒陵山 四天王寺 | 救世観世音菩薩 | 和宗 | 大阪府大阪市天王寺区四天王寺1丁目11-18 | なにわ7幸 |
45番 | 坂松山 高岳院 一心寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗鎮西派 | 大阪府大阪市天王寺区逢阪2丁目8-69 | |
46番 | 紫雲山 聖聚院 来迎寺 | 天筆如来 | 浄土宗鎮西派 | 大阪府守口市佐太中町7丁目11-17 | |
47番 | 遍照山 時光寺(慈光寺) | 阿弥陀如来 | 浄土宗西山禅林寺派 | 兵庫県高砂市時光寺町12-18 | 播州善光寺 |
48番 | 誓願寺 | 阿弥陀如来 | 浄土宗西山深草派 | 京都府京都市中京区新京極桜之町453 | 洛陽6阿弥陀 |
札番 | 御詠歌 |
1番 |
導かん なつみ水汲む 男女まで わかり安かる 歌を知らして 急げ人 弥陀の御船の かよふ世に 乗り遅れなば いつか渡らむ 待ちかねて 嘆くとつけよ みな人に いつをいつとて 急がざるらん |
2番 |
いつまでか 明けぬ暮れぬと 営なまん 身はかきりあり ことはつきせず とふとめよ 金の玉のそれよりも 仏法僧の 三つの宝を 魂も 冥土もなきと 言ふ人は 釈迦より知恵の いかにありてか |
3番 |
極楽も 地獄もなしと 言ふ人は やがて奈落に 落つる人なり 釈迦仏も 地獄の苦げん もし説かば 人は血を吐き 死ぬとしめせり 善き人と 世には言ふとも 念仏を まうさぬものは 地獄にぞゆく |
4番 |
ほんなうの 護符に引かれて 誰も皆 地獄よりほか 行き方もなし 盗みせず 人殺さぬを 良きにして 身に咎なしと 思うはかなき 出づるいき 入るいきことの 思ひこそ 地獄に落つる 種となりぬれ |
5番 |
夜昼に 八億四千の 罪咎は 重荷としらで 身に負ひにけり われ人の 罪は菩薩も 知らねども ただ仏のみしろ しめしけり もしも又 閻魔のてうに 到りなば 泣けど叫べど その甲斐はなし |
6番 |
往生の ためにこの世に 生まれきて 元の悪趣に またもかへるな 忘れても また生まれんと 思ふなよ ここは迷ひの 六道の辻 極楽の やがて悟りの 身となりて また世にかへり 人を導け |
7番 |
諸々の 教へはあれど 末の世の 人の力に たえて叶はず たまたまに 修行の道へ 進めども 心のこまは あれまはる也 しゅうぶつの 縁の絆 切れ果てて 生死の海に 漂ふぞうき |
8番 |
今の世に おのれみづから 修行して 仏になるを 自力とはいふ 阿弥陀仏の 誓ひにすがる 御名呼びて 往生するぞ 他力なりける 自力にて 菩薩位経るも 安からず まして仏に なるはかたきぞ |
9番 |
諸々の 仏は見捨て ましませど 弥陀ひとりこそ 助け給へれ 誓願に 南無阿弥陀仏と いふ人を 救ひとらずば 弥陀と名乗らじ おのが身を 極悪人と かへりみて 仏の御名を たへず唱へよ |
10番 |
ただ頼め よろづの罪は 深くとも 我が本願の あらんかぎりは 南無阿弥陀 仏の御名の ひとこえに 無量の罪は 露と消へけり とのふれば 願行ともに ぐそくせり 口に任せて 南無阿弥陀仏 |
11番 |
念仏を 唱へて往生 することは 弥陀の本願 釈迦の経説 唱ふれば たかはでにしに 生るると 諸仏証拠に たたせたまへり 阿弥陀仏と 唱へて往生 もしせずば 六方諸仏の 舌や朽ちなん |
12番 |
阿弥陀仏に 釈迦は伝へを 受け継ぎて 浄土の 御のり 説き給ふなり 釈迦仏は 南無阿弥陀仏の 功徳をば 世に説かんとて 出で給ひけり 念仏の 功徳は釈迦も 一代に とけども尽きぬ のりのたふとき |
13番 |
六字こそ 大善根の 功徳なれ 少善根は 余経なりけり 念仏を 末の世々まで 伝へよと 釈迦は阿難に 附属したまふ あなたふと 無上功徳の 念仏に 諸仏諸教も こもるとぞきく |
14番 |
極楽を 願ふにふじの たかねぶつ この上もなき 悟りなりけり 念仏を 聞くばかりにて 生るれば 唱ふる人は 疑ひもなし 難しき あんじんざたを 止めよ人 今にも死なば いかがしつらん |
15番 |
知らぬから 世にむつかしく 思へども 南無阿弥陀仏と いへば生るる 念仏は 立ちい起き伏し 唱へよや 清き穢れの 選びなければ 阿弥陀仏は 善きも悪しきも 有智無智も 貴賤男女も 隔て給はず |
16番 |
女人こそ 男にこへて 嬉しけれ 五七の願は いと確かなり 往生を 願ひながらの 世渡りと おもふて御名を 絶へず唱へよ 悪人を 助けんとての 弥陀なれば 作りし罪は さもあらばあれ |
17番 |
悪人を 助けたまふと きく上は 少しの罪も 作らざらなむ いささかの 罪も深山の 夏の葉の 日毎にしげり 身におほふなり 唱ふれば よしや十悪 五逆罪 作りし人も 助けたまへり |
18番 |
世にこへし 大願力の たふとさよ 慈悲の他なる 不可思議の慈悲 妄念の よしおこるとも 捨て置きて ただ一筋に 南無阿弥陀仏 濁りても ねぶつのたまを 投げ入れば 心のみづぞ 清くなりぬる |
19番 |
煩悩の 煙もなみも たたばたて 道一筋を 西にこそ行け 必ずも 機の良し悪しに 寄らずして 唱ふる者を 助け給へり 唱ふれば 分陀利華とぞ 褒めらるる 人の中にも 人ぞまれなる |
20番 |
愚かなる 我等が信は あさけれど 仏の願の 深きたふとき 殊更に 重き罪ある 身をばなを 救はんとての 誓ひなりけり のりえては かぢもろかひも いらばこそ ただ浦々の 風に任せよ |
21番 |
罪あれば 下品下生も およばじと 低き願ひは 誰もかけなよ 我はただ 上品上生 その他へ むまれまじとの 心はげぬる 一丈の ほりをこへんと 思ひなば 二丈三丈 こえむとはせよ |
22番 |
念仏に きらへるものは なけれども 名聞がまん 用心をせよ しのびつつ まふせといふに あらねども 人目をかざる 心起こすな 名聞と 心つきなば そのままに かざる心は 消へて失せなん |
23番 |
われほどに つとむる者は あるまじと 思はばやがて 魔のさはりなり おもてには 信者と見せて まことなく 心のをくに 悪なたくみぞ 末の世は 外の御法は 失せ果てて 御名を唱ふる ばかりにはなる |
24番 |
とき過て 益なき業を 捨てよかし 五劫思惟は たがためぞそも ちよろづの 法のおしへを まじへずに まうすが一向 専修なりけり 誰も皆 釈迦のおしへに 随ひて ただ一筋に 御名を唱へよ |
25番 |
往生は 御名を唱ふと 定めてし うへは余行も 助業とぞなる 結縁も 助業も今は 差し起きて 一向専修に しくことぞなし もしも人 余仏余経を そしりなば 弥陀の心に 背くとは知れ |
26番 |
一向は 心をこらす ためぞとて 仏や祖師の 深き教へぞ 専修には 現世の祈り なさずして 阿弥陀仏に 二世を任せよ 夢ぞかし たといや思ふ あらましを 叶へたりとて いくほどの世ぞ |
27番 |
うきことの かさなる身こそ 嬉しけれ 世を厭ふべき たよりと思へば 願へども 浮世に心を とどむれば つながる舟を 漕ぐごとくなり ひしひしと たのまばひしと 頼めがし なまざかしきは 弥陀にうときぞ |
28番 |
忘れずば よしと心を すましゐて 御名を唱へぬ 人ぞ悲しき 信じても 唱へぬ人は 益ぞなき 心に思ひ 口にまふせよ 目に拝み 口に唱へて 耳に聞き 声が生まるる しるしなりけり |
29番 |
念仏は 高き声にて 唱ふれば いよいよ功徳は 深きとぞきく 誰もみな 六字たしかに 唱へよや 南無阿弥陀仏と つの字つめずに 日課として 念仏の数を 定めねば 怠りがちに 成やすきかな |
30番 |
怠らば きのふをけふに つとむべし あすをとりこす ことは良からず 別時とて 月に一日 もし七日 御名つとめよと をしへたまへり 人多く 集まる時は 夜もすがら 念仏の声を たやさざらまし |
31番 |
所作じゅずを つぼくりにして 千よりは ざらざらぐりに 数万重ねよ 追善は 三宝供養 いとなみて 百万遍を たれもつとめよ 念仏の 数をつむをば 自力ぞと いふは他力を 知らぬ人なり |
32番 |
安心に 自力他力と いふことは 心ひとつの 運びなりけり わがかたに 自力他力も すておきて ただ唱ふるぞ 他力なりけり 仏出て よし念仏を とどむとも 悪魔のなせる わざと知れ人 |
33番 |
いやしとて 御名をすすむる 人ならば げにや仏の 使なるらん 人ひとり すすむるこそは 万億の 仏をつくる 徳にこへたり ひとこえも 捨てぬ誓ひを 悦びて いよいよかずを はげみ唱えよ |
34番 |
朝起きて 顔を洗はば 濡れでにて 西拝みつつ 十声唱へよ 阿弥陀仏と 十声唱へて まどろまん 長き眠りと なりもこそせめ 唱ふれば 寝ても覚めても 阿弥陀仏は かげやかたちを はなれたまはず |
35番 |
御仏の 姿形を 観ぜずと 声にい出して 南無阿弥陀仏 霊験を みんと心に かけんより ただ往生と 思ふこそよき 往生を 疑ひながら 唱ふれば 唱ふるごとに 疑ひとなる |
36番 |
疑ひも わが煩悩の 雲なれば 唱ふる声の 風にはれゆく うつつちの 大地はよしや はづるとも われはけつじやう 往生をせん 往生は 世にやすけれど みな人の まことの心 なくてこそせぬ |
37番 |
一度も 助けたまへと 思ふより 唱ふる声は まこととぞなる 極楽へ 生まれんと思ふ 心にて 南無阿弥陀仏と いふぞ三心 本願の 慈悲の深きを 信ずれば これがまことの 他力なりけり |
38番 |
阿弥陀仏の 慈悲の光の 恵みにて われらが信の おこるたふとき 名号の つりばりのみし いろくづは いつかは弥陀の 御手に引かれむ この身さへ すきもあまきも そなふれば まうせば西へ おのづから行く |
39番 |
唱へるつ 人のおはりに をのづから 仏のむかひ ある道理なり 約束の 念仏はまうし さむらふに やらふやらじは 弥陀のはからひ 念仏を 低き御法と 思ふなよ 神や仏も 唱へたまへり |
40番 |
唱ふれば 神や仏も 諸共に 祈らずとても 護り給へり 十万の 神や仏と 別れても もとへ帰すれば 弥陀の一仏 あふぎ見よ 弥陀の名号 末ひろく 八万四千の 経のかなめと |
41番 |
西方は 諸仏の国に たちこめて 極楽とこそ 呼び給ひけり 唱ふれば ここにゐながら 極楽の 聖衆の数に 入るぞ嬉しき 御名呼べば かしこにはちす 顕れて わが名しるすと 聞くぞ楽しき |
42番 |
ながらへば 念仏のこうを つみつみて 死なば浄土へ 参りつきなむ 何事も みな偽りの 世の中に 死ぬるばかりは まことなりけり 南無阿弥陀 助け給への ほかはみな 思ふも言ふも さはりなりけり |
43番 |
看病の 功徳おほくて 広ければ 言葉のうへに 述べがたきかな 介抱を 不足に思ふ 病人は 心いかれて 地獄にぞ行く 臨終は つねと思ひを わけ置きて 忘れず祈れ 正念往生 |
44番 |
もしや人 病ひにあはば 御名唱へ 僧を頼みて 受けよ十念 臨終は 北を枕に 西に向き 来光仏を 前にかけおけ 夢や夢 病の人に 向かひては 浮き世のことを ふつにかたるな |
45番 |
正念を 祈り願へよ 誰もみな いまはのきはの 人にかわりて 臨終の 心は乱れ やすければ 誰も静かに 御名を唱へよ たとひまた 火の車来て むかふ共 唱ふる声に 弥陀は来光 |
46番 |
死期近く ならばつきそふ 人々も 酒肉五辛の 呑みくひをすな 一息に 御名一声つ 唱へよや はやくちなるは 死苦ぞ増しけり 末期には 水は良からず 湯を持ちて 潤すことは すくなきぞよき |
47番 |
終わるとき 耳に近寄り いんきんを ひくいきごとに ひとつ鳴らせよ 仏には 香華灯明 供養して 御名唱ふより 他ないふまじ 諸菩薩は 伎楽歌詠の をと高く まくらのもとに むかひたまへり |
48番 |
たのしやの 阿弥陀仏を 拝むれば 心も身をも 清くなりけり はだへさへ 紫麿金色と なりぬれば 生老病死の うきなたえにき うまるれば 十地の願行 自然にて いつと知らねど 仏とぞなる |
札番 | 翼添之歌 |
1番 |
たしなみに これを覚えて 唱へかし 益なきことを 語るひまにも 縁ありて 人と生まるる その中に 弥陀の誓に あふそ嬉しき かくばかり 契りまします 阿弥陀仏 知らず悲しき 年を経にけり |
2番 |
後の世と 聞けば遠きに わたれども 知らずやけふも その日なゐらん 受けがたき 身をいたずらに なしてまし かかる御法に 生まれあはずば 魂の 娑婆と冥土に うかぶから 世に死に生きの ありと知れ人 |
3番 |
おそろしや 無間地獄に 落ちゆかば 再び浮かむ ことのなからむ 聞きてさへ 身の毛いよだつ 地獄餓鬼 落ちて行なば いかがしてまし 鬼の子は 心よしとも 人ならず 善人とても 凡夫なりけり |
4番 |
後の世は 迷うならいと 聞きながら 道を求めぬ 人ぞ悲しき なにひとつ 覚えて罪は 作らじと 世に愚かなる 人はいふなり ゆきかよひ 寝ても起きても 世の人は 思ふも言ふも さわりとぞなる |
5番 |
善根も なさで戒法 たもちえず 御法の道に いかでかなはん むしょうの 罪に姿の あかならば 須弥よりかたき 山と成らん 歯は落ちて ゆきの白髪の おひぬるは それぞ閻魔の 使とぞ知れ |
6番 |
恐ろしや 名もなき虫と 生まれなば 人にも縁の 遠ふざかるらん よしやまた 都卒天まで 生まれても 生死をいづる ことはなきなり 往生は 菩提心ぞと 悟りつつ 慈悲を起こして 人救ふなり |
7番 |
戒行の 足腰立たぬ われらゆへ 誓ひの舟に 乗るぞ嬉しき 時過ぎて 自力修行は ならばこそ 身をも心も かへり見よ人 いかにせん 日は暮れ方に なりぬれど 西にゆくべき 人のなき世を |
8番 |
自力には 菩薩も戒を 破りなば もとの凡夫に かへるとぞきく 他力には 破戒ながらも 唱ふれば 往生成仏 するぞ嬉しき 諸菩薩も 自力成仏 ならずとて 西にむまれて 仏とぞなる |
9番 |
見捨てても 諸仏も弥陀に 頼めとて 慈悲のあまりに おしへたまへり 阿弥陀仏と ならせたまへば 誰も皆 往生こそは たがふことなし たのませて たのまれたまふ 弥陀なれば たのむ心も 我とおこらじ |
10番 |
弥陀頼む 人はあまよの 月なれや 雲晴れぬども 西にこそゆけ 煩悩の 罪はあれども 阿弥陀仏を 唱ふる口に 出入りまします 往生を せんと思ふを 願として まふす計を 行とこそいへ |
11番 |
死して後 我が身にそへる 宝には 南無阿弥陀仏に しくものはなし しゅうぜうは 他の経にも 有ぬれど 恒沙諸仏の 舌相はなし 往生を 確かに思へ 受やうと 諸仏の慈悲の 証拠なりけり |
12番 |
十方の 三世の仏も 正覚を 弥陀によりつつ とらせたまへり 舎利弗も 阿難も知らぬ 六つの字の 功徳を凡夫 いかでしるべき あなたふと 南無阿弥陀仏の 六つの字に 深きいはれの こもるとぞきく |
13番 |
名号を いかなることと たづぬれば 助け給への 言葉なりけり 定散の 行も仏は 説ながら 六字ばかりを 附属したまふ 阿弥陀仏の 真実心の 不可思議の 慈悲ぞむもじの 御名と成けり |
14番 |
念仏の 浅き教へは そのままに 深き御法の 不可思議ぞかし 法滅は みなあんじんも 失せ果てて まうすばかりに 助け給へり さひはひに 無智は念仏の 機なりけり ものをも知らぬ 人まどはする |
15番 |
かくてこそ 我は了解を したるぞと 思はばやがて 自力なりけり 仏前に 勤むるときは うやまひて きょくせんには しくことぞなき 念仏は 助け給へと 唱ふれば 愚者も学者も かはらざりけり |
16番 |
罪深く 疑ひ深き 女人さへ 二重の願に あふぞ嬉しき 心には 後生を先と 大事にし この世のことを 次と思へよ 心だに 立てし誓ひに かなひなば 世の営みは とにもかくにも |
17番 |
ほころなよ 弥陀を後ろに 立つるとも 前に地獄の あるを知らずに 善根も 悪事もなせば 日にまして 後の世までも 報ひゆくなり 成仏は 五逆のものは ならぬとて 諸仏菩薩も 見捨て給へり |
18番 |
罪深き 身は中々に 嬉しけれ さてこそたのめ 弥陀の誓ひを 煩悩は 人の目鼻に 似たりとて 他力の祖師は 許し給へり 片時も 澄める心の あらばこそ 澄ます心を 捨てて唱へよ |
19番 |
喜ぶと 嘆くと腹の 立つ時も なににつけても 南無阿弥陀仏 よしや身に あらゆる戒を 保つとも 御名を唱へぬ 人ぞ悲しき 弥陀頼む 心の内に 隔てなき 仏はさらに 身をば離れず |
20番 |
わするなよ 作りし罪は 深くして 仏の慈悲の 強きつかいひを ひかれよや 心の波は あさくとも もらさで救う 弥陀の大網 紫の 雲の迎ひの 蓮台に 手をかくるまで 油断すな人 |
21番 |
極楽の 門の外でも 足りぬよと あはれつたなき 心起こすな このたびも 往生せずば よしや人 衆生化益の 慈悲にたへなむ 一筋の 早瀬の川も 渡らんと 思ひ込めなば 岸に着きなん |
22番 |
高慢は 八万四千の 煩悩の かしらとなりて 障りとぞなる 人みなは 深くねぶりに 沈む夜は 目を覚ましつつ われは唱へよ 名聞に 引き立てられて 唱ふれど わがこへきけば まこととはなる |
23番 |
いつこにか 命限りに 勤めつる たふとき人の あるも知られず 往生を 願ふ誠の あさきゆへ 悪事を止める 心だになし 念仏は 弥陀の本願 諸仏さへ 世に残さんと 護念したまふ |
24番 |
こざかしく かたことまぜて 経陀羅尼 読むよりもただ 御名を唱へよ 阿弥陀仏の 別の誓ひの 念仏に すけをさしなば 雑行となる 念仏も 余行も釈迦の せつなれど 六字は弥陀の 約束ぞかし |
25番 |
名号の 徳をあらはす 余経ぞと おもへばすべて たふとかりけり 慈悲深き 神や仏の 諸々の 誓ひを露も かろしむなゆめ 専修とて 外のをしへを かろしむは おのが心の 僻みなりけり |
26番 |
知らぬから 一向専修 念仏を そしるやからは 地獄にぞゆく ともし火を 神に捧げし 光にて 行き来の人も 道をこそ見れ 極楽へ 参らん事を 悦ばで なに嘆くらん 穢土の思ひを |
27番 |
世の憂さも 地獄の苦には 比ぶまじ まして浄土は 楽しかりけり 身のほどは とまれかくまれ 機のままに 御名を唱ふる 人はたふとし わずらはず 歳もよらざる 根気ある 若き盛りに 励みつとめよ |
28番 |
明暮に 浮世のことに つながれて ただ忙しと 終にはてなむ 浮世には 心も身をも つくせども 後世にうとき 人ははかなし 鐘を打ち 珠数をつまぐり 身をせめて 大声あげて 励み唱へよ |
29番 |
わが耳に きこゆるばかり 唱ふべし また大声に しくものぞなき はや口に 身をも心も 打ちまかせ 助け給へと 励み唱へよ 唱へつつ 寝ても起きても 往生を 忘れまじとの 日課なりけり |
30番 |
一たびに つとめてよしと 思ひては 臨終までを とりこすぞうき 折々は 身をも心も 励め人 供養はおのが 心こころに みな人も 代わるがわるに つとめよや 無間修とこそ 祖師はおしゆれ |
31番 |
誰もみな 下根なりとて ざら繰りに 祖師の慈悲にて おしへたまへり 日課にも 百万遍を ひとりして つとむることは たふとかりけり 念仏を とどむる人は あなうたて わが往生の かたきなりけり |
32番 |
自力ゆへ 往生せぬも うかりけり 他力の願に かなはざりせば 一筋に 無智もうまると 思へただ 知るも知らぬも 渡す誓ひを わが法は たふとしといひ 念仏を いひやぶりなば 邪道なるべし |
33番 |
御名唱へ 往生すると 定めなば われはつとめて 人を導け 皆人を 渡さんと思ふ 心こそ 極楽へゆく しるしなりけり けふよりは 命の終る ゆふべまで 身をつくしても 唱へよや人 |
34番 |
明け暮れも 寝るも起きるも 食時にも その節ごとに 十声唱へよ 唾吐くも 二便も西に 向ふなよ 寝るには西に 向かふなりけり たへまなる 阿弥陀仏を 念ずれば 仏も常に 見捨て給はず |
35番 |
観念の 念仏は祖師も 自力にて 他力の法に あらずとぞいふ 急がでも 往生遂げば 阿弥陀仏を 心のままに 拝みこそせめ かくまでに 疑ひ深き 心かな 許したまへや 南無阿弥陀仏 |
36番 |
疑へる 人はともあれ われひとり 往生せんと 決定はせよ 唱ふれば うら思ひする こともなし おこたるにこそ 疑ひもあれ ただまうせ まうすうちには 自ら 深きまことも おこりこそすれ |
37番 |
まことかと たづねいだすに 及ぶまじ 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 阿弥陀仏と いふより外は 津の国の 難波のことも あしかりぬべし 愚かなる われらが信を 先立てて 次にはなさじ 弥陀の誓ひを |
38番 |
御仏の 光にあへば 罪人も いづる念仏ぞ たふとかりけれ ねんごろに 生まれさせんの 願力に 取り立てられて 往生ぞする 悪事して からめとらるる ごとくにて 唱ふる報ひ 弥陀にひかれむ |
39番 |
往生を もし占はば 念仏を まうす人こそ 一定としれ 往生は 紫雲異香の きずいより 唱ふる声ぞ しるしなりけれ 唱ふれば 文殊普賢も 阿羅漢も 祖師も我らも 友となりぬる |
40番 |
世にこへて 立てし誓ひの 念仏を 神や仏の ほめざるはなし ともすれば とふとき御名を 穢すぞと 忌み嫌ひては 地獄にぞゆく 念仏は 万徳所帰の 徳ありて 神や仏の きかざるはなし |
41番 |
余の国は 寿命に限り 有りぬれど 弥陀の御国は 限りなきなり 寝てもまた 起きても弥陀の ふところに ゐるぞと知れば 嬉しかりけり 念仏を 励めば花は 栄へけり 怠るときは しぼむとぞ聞く |
42番 |
臨終を 今日と思ふに のびぬれば へいぜいとこそ またはなりけり 死ぬる身は にくやかはいや おしほしと 心残せば 迷ひこそせめ 極楽を 心のをくに たづぬれば 南無阿弥陀仏の 口にこそあれ |
43番 |
病人を 仏のごとく うやまひて あはれむことは 子のごとくせよ あめ露を うけつ野山に はつる身を 深き情けの かいはうとしれ さいごには 悪魔が競ひ 来るなれば 正念なれと 弥陀の来迎 |
44番 |
夜昼に 御名いくたびも 授かれよ 死苦を逃れて 正念となる をりをりは 御手の糸をば 手にかけて 引接摂取の 思ひなすべし もし人の おはらん時は 念仏を すすむる人は 善知識なり |
45番 |
臨終は 死苦や八苦に せめられて 念仏をまうす ことのならねば 終るとき 嘆きの声を もし聞かば 心とどめて 悪趣にぞゆく 終わ時 ただ茫然と なりぬれば つきそふ人は 御名をすすめよ |
46番 |
肉酒を くはば悪魔の 誘ひ来て うたて悪趣に 引かれそぞゆく 誰も皆 八万四千 かづかづの 塵労門の 死苦は逃れず 拝腹の 名号を湯に 入れおきて 十声唱へて 口をうるほせ |
47番 |
いらふなよ いらはばいよいよ 死苦まして 心乱れて さはりとぞなる をはりなば ややほど過ぎて あつかへよ 急ぐまじとは 祖師の教へぞ 観音は 蓮台寄せて 乗せさせつ 勢至は積むり なでたまふなり |
48番 |
極楽は 寿命無量に 長ければ 楽しみもまた 尽きることなし 身にまとふ 衣服じねんに あらはれて 心にみつる 百味おんじき ただまうせ ただと思はで ただまうせ まうすがたの ただまうすなり |