★弘法大師　御府内八十八ヶ所霊場

◆弘法大師壱千百年記念展覧会栞（高野山金剛峯寺、報知新聞社　主催）より一部抜粋、補記

「霊場巡拝に就いて」

東京御府内八十八ヶ所霊場は、今を去ること百六十余年前、正等上人が四国霊場をまわって江戸市内を中心に開創せられたもので、爾来巡拝する者年と共に多きを加えて居るが、正等上人が四国霊場の景色に似かよった場所という意味で開かれた関係上、第一番芝区二本榎高野山東京別院（江戸在番所長寿寺）、第二番中野区江古田町東福寺（豊多摩郡野方村太子江古田）という様に、飛びとびになっている。

殊に大正十二年関東大震災後は、東京市の復興計画と関連して札所寺院が東京新市域に移転改築したものをのぞいて、一番、二番、三番と順次巡拝することは非常に困難である。

一般に大師信者等が月々巡拝するには、俗に六日間巡りと称し、別記の道順で八十八ヶ所霊場を一巡する様になっている。

◆他、複数の資料からのまとめ、補記

大進夜話には、宝暦5（1755）年に信州浅間山の上人本願による開創との記載があり、これが最古の表記となっている。次いで、十返舎一九が文政5（1822）年に東都大師巡を著し、その中で宝暦の頃に下総国松戸宿の諦信親子が発願と書いた。さらに時代は下って明治33（1900）年版の府内道順記では、31番の多聞院に墓のある正等和尚その人が開創としている。

・江戸東京都内（神奈川県への移転札所もある）の弘法大師巡拝霊場。

・天災、戦災、移転などによって、開創時と札所が大幅に変わっている。

・第19番札所を名乗る札所が、2ヶ所存在している。

・現在、19番札所として定着しているのは青蓮寺の方で、各種書籍や個人サイト等でもこちらのみが紹介されているケースが多い。

・開創者に関しては、現在では（A説）が通説となっている。

・開創者とされる正等上人とは、第31番札所の多聞院の住職だった人物。

・同じく憲浄とは、信州の浅間山真楽寺の権僧正で、別名を善穏と言う。

・また、諦信親子は十返舎一九の著作でのみ知られる人物で、市井の信仰厚い人物ではないかとされている。

・そのため、憲浄上人の発願、諦信親子を願主として開創したとの（B説）がある。

・資料によれば、3月10日から21日までの間に参拝することで、「参詣之輩ハ利益広大也ト云」とされている。

・上述の霊場解説は、弘法大師壱千百年記念展覧会として、昭和9年1月10日から1月27日まで東京日本橋の三越で開催されていた展覧会の栞。

・昭和9年当時の札所配置であり、第77番もまだ都内にあった。

・そのときの巡拝ルートで、6日間で結願が可能だった。ただし、札番通りに巡拝するのではない。

・2019年時点で、霊場専用の御朱印帳（納経帳）での巡拝が推奨される。

・ネット情報によれば、専用の帳面以外には御朱印を授与しないといった札所もあったそう。

・霊場会は存在しないが、1番がまとめ役寺院としての立ち位置であり、御朱印帳も取り扱っている。